腎移植後には、腎不全による体調不良が改善し、透析による時間的な制約もなくなるため、腎移植レシピエントの身体的・肉体的な生活の質は向上します。免疫抑制薬の内服と1~2か月毎の通院継続は必要となりますが、健康な人と同じように特に大きな制限なく日常生活が送れます。状態が落ち着いていれば、移植数か月後から就職・社会復帰も可能です。運動も行うことができます。移植腎機能が安定していれば、食事制限もかなり緩和されます。しかし、腎移植後の生活では注意すべき点がいくつかあります。特に、免疫抑制薬を服用しているので、感染に対する予防が重要です。海外旅行は基本的に自由に行うことができますが、免疫抑制状態であるため感染に対する注意が必要であり、感染リスクの高い地域はできるだけ避けるなどの配慮は必要です。また妊娠・出産を希望する女性の腎不全患者さんでは、腎移植を行うことで妊娠率が上がり、安全な出産・妊娠も可能となります。
9.腎移植を受けた後のフォロー
腎移植を受けたあとは移植腎の機能を長期にわたって悪化させないように管理していくことが大切です。拒絶反応を起こさないために免疫抑制薬を服用していただき、血液検査や尿検査を定期的に行って移植腎機能をチェックしていきます。免疫抑制療法は少なすぎれば拒絶反応を引き起こし、多すぎれば感染症や薬の副作用、悪性腫瘍の危険もでてくるため、適正な免疫抑制療法ができているかの確認は常に必要です。移植腎機能が悪くなる原因は拒絶反応だけでなく、免疫抑制薬の副作用や腎不全の原因となったもとの腎臓病の再発などもあり、きちんと診断して治療することが移植腎を守るために重要で移植腎生検という検査が必要です。また腎移植後の合併症による死亡を防ぐためには、感染症の予防、がん検診を受けること、高血圧、糖尿病、肥満など生活習慣病のリスク因子を管理することが重要です。
10.腎移植ドナーの予後
生体腎ドナーとしての適応、条件については、基本的条件として原則、6親等以内の血族、配偶者、3親等以内の姻族に限定されています。また、自己意思による提供である、身体的、心理的、また社会的背景などの評価が精神科医など第3者によってもなされることが必要です。基本となる適応基準(括弧内は良好とはいえないが、可能な基準を示しています)として、年齢は20歳以上70歳以下(80歳以下)、血圧140/90mmHg未満(降圧薬使用例では130/80mmHg以下)、肥満がなくBMI 30Kg/m2以下(肥満があっても32Kg/m2以下)、GFR 80ml/min/1.73m2以上(70ml/min/1.73m2以上)、蛋白尿150mg/day未満、糖尿病がなくHbA1c 6.2%以下(経口薬使用例ではHbA1c 6.5%以下、インスリン使用例は適応外)などの条件が必要とされています。詳細は、日本移植学会ホームページ、生体腎移植のドナーガイドラインを参照してください。
*** リンク先の 日本腎臓学会 ポリシーに従います。